誰でもできるレタッチ術

エモい写真を実現するレタッチのアプローチ【プロフォトグラファーが執筆】

【この記事を書いた人】
Nocchi(のっち)
1993年北海道生まれ
Webエンジニアとして働く傍ら、休日フォトグラファーとして活動中。
東京を拠点に主に都市風景、ストリートスナップを撮影している。写真の楽しさを伝えるべくブログの運営とコミュニティの運営も行っている。
BLOG: https://www.camerife.com/
PORTFOLIO: https://nocchi.jp/
INSTAGRAM: https://www.instagram.com/nocchi_24/

一眼カメラで撮った写真をSNSで公開するのが当たり前になってきてからというものの、エモい写真という言葉が一人歩きをしているように感じます。

写真の雰囲気や感想において抽象的かつ便利な言葉で、SNSでは聞かない日がないくらいな言葉となっています。

そんな抽象的で漠然としたエモい雰囲気を目指すために各フォトグラファーが撮影をして、レタッチをしています。

そして私もそのうちの一人。

レタッチは写真の性質を増幅させてくれる手段であり、自分の理想のイメージに近づけてくれるツールでもあります。

このツールを使いこなしてエモいという漠然としたゴールに向かっているわけです。

現像ソフトの機能の一つ一つは単純なものが多いのですが、複合的に絡み合うことで一気に難しく感じてしまいます。

そんなレタッチ沼にハマっている方や、レタッチの初心者の方も読んでいると思いますで、本記事ではどのようなレタッチを行うとエモい写真になっていくかという点について書いていこうと思います。

エモいとは

そもそもエモいとはということについて考えることから始めていきます。

emotional(エモーショナル)を由来として、言葉にできない感情や趣があるように感じたときにエモいというワードを使うものだと思います。

それを写真に落とし込んでいくと、ストーリー性のある写真、温度感や湿度感を感じる写真、今だと特にフィルム調の懐かしさを感じる写真から趣があると感じるのではないかと思います。

あくまで私が勝手に感じているだけで、もちろん他にも当てはまる写真があります。

これでもまだ漠然としていますが、ただエモいと言われるよりはなんとなくのイメージが湧いたかと思います。

ということで今回はストーリー性のある写真、湿度感を感じる写真、フィルム調の写真にするためにはどのようなレタッチを行えばいいかを紹介していきます。

この3つを抑えておけば何かしらのエモさを手に入れられるはずです。

使う現像ソフト

まずレタッチを進めていくうえで必要な現像ソフトについて。

各メーカーから様々な現像ソフトが用意されていますが、私が使用しているのはAdobe Lightroom。

クラウドで写真データを管理できることからPCでもスマートフォンでもどこからでもレタッチをできるため重宝しています。

特殊な技術を使ったレタッチをしているわけではないので、どの現像ソフトを使っても参考になるかと思います。

Lightroomをインストールしている方はこの記事を読みながらレタッチをしていただくとより頭に刷り込まれやすくなるかと思います。

エモいレタッチ

それでは実際にエモいと言われるような雰囲気を作っていくためのレタッチをしていきます。

今回はストーリー性、湿度感、フィルム調を意識した3パターンについて紹介していきますが、前提知識として知っておいていただきたいのがLightroomでいうところの以下の3機能。

  • トーンカーブ
  • かすみの除去
  • カラーグレーディング

基本的な露出補正や色調補正に加えて上記3つの機能を学習して把握しておくことで再現性のあるレタッチをすることができると思います。

トーンカーブ

トーンカーブは明暗とコントラストの補正ができ、写真の露出を自由に編集できる機能です。

レタッチにあまり馴染みのない方からするととっつきにくいイメージを持たれているかもしれませんが、そんなに面倒くさいやつじゃないので仲良くしてあげてください。

かすみの除去

かすみの除去は名前の通り、大気や光線によって靄(もや)がかかったような写真を、鮮やかで際立った写真に仕上げることができます。

カラーグレーディング

カラーグレーディングとはシャドウ、中間調、ハイライトについてカラーコントロールを行える機能です。

カラーホイールと呼ばれるコントローラーを駆使してシャドウ、中間調、ハイライトを組み合わせて、写真にフォトグラファーの独創性を注ぎ込める機能となっています。

色味を作り込んでいくうえで欠かせない機能となっています。

ストーリー性

まずはストーリー性を表現してエモい雰囲気にしたい場合について。

レタッチの題材となる写真はこちらとなります。

視線を集める

ストーリー性を表現したい場合は、写真を見る人の視線をどこに持っていきたいかということを考えます。

今回の写真でいえば、休日のランチでお店に並んでいるが、仕事の電話なのか困っている男性に注目を集めたいところです。

注目をさせるためには以下の手順が手っ取り早いです。

  1. トリミングで余白を捨てる
  2. 注目させたい箇所を浮かび上がらせる

今回でいうと写真の半分より上は余計な情報のため思い切って切り捨てます。

次にシャドウを上げる、もしくは部分補正で手前の男性だけ少しだけ露出を上げます。

トリミングと手前の男性の露出を少し上げた写真がこちら。

地味な作業ですが、一瞬を切り取るスナップ撮影では構図や露出をゆっくりと考えている時間はなく、いいなと思った瞬間にシャッターを切る必要があります。

そのため、写真を見る側の視線を集めるのはレタッチでもある程度は可能かつ、重要な作業となります。

陰影を強調させる

これは好みが分かれてしまうところではありますが、陰影を強調させるとよりストーリー性を感じる写真に近づきます。

陰影を表現するにはトーンカーブを以下のような形にしています。

真ん中から左1/4までを全体的に下に下げることで、暗い部分がグッと引き締まります。

このトーンカーブの形にすることでハイライトは上げずに済むため、コントラストが効きすぎた、こってり感を避けることができます。

色味

色味はカラーグレーディングを使って作り込んでいきます。

今回は春の昼下がりというタイミングでの撮影だったので、ハイライトにオレンジ、中間調に黄緑を入れることで春の陽気を表現していきます。

ストーリー性を演出したい場合は、注目点を明確にして陰影と季節感を出すように工夫していくことがポイントであると思います。

湿度感

次に湿度感を表現することで写真から撮影当時の空気感や温度感を感じさせるレタッチを紹介していきます。

レタッチの題材となる写真はこちら。

この日は豪雨ということもあり、昼でも夜のように暗く混沌とした雰囲気でした。

そんな日のなんでもない瞬間を撮ってみた写真です。

上図はほぼほぼ撮って出しとなりますが、雨のツヤ感や湿気がさほど感じられずにのっぺりとした印象を受けます。

湿気感

雨といえば湿度。

写真から湿度を感じるとそこにエモさも感じるものです。

湿度を感じさせるには、まずはかすみの除去を使います。

文字の通りかすみの除去を上げることで靄や霞を排除できる機能ですが、逆に下げてあげるともわっとした雰囲気になります。

靄がかかっているような雰囲気とまではいきませんが、もわっとした湿度を感じる雰囲気にさせてくれます。

次にトーンカーブ。

トーンカーブは下図のように、一番左のポイントを上げてあえて黒の階調を狭めることで、深い黒からグレー味を帯びた黒に変化させます。

こうすることでメリハリのあるパリっとした雰囲気から霞んだようなマットな質感と見た目になるため、更に湿度を表現することができます。

この左のポイントを上げるトーンカーブの形は、エモい雰囲気を作る場合にほぼ必須なくらいよく使われます。

よくフェードをかけるとも言われます。

かすみの除去とトーンカーブを調整した写真がこちら

レタッチ前に比べると湿度を感じる雰囲気になっているのではないかと思います。

雨の混沌とした雰囲気

次に日中でありながらも暗く、気持ちまで盛り下がってしまうよな雰囲気を作っていきます。

今回の写真はシャドウと黒レベルを下げることで全体的なトーンを下げました。

シャドウと黒レベル、またはトーンカーブの左半分のみを使ってローキーにしていきます。

トーンを下げたらカラーグレーディングで仕上げです。

写真を見たときに冷めた雰囲気を感じてほしいため、シャドウ部に青を少しだけ入れてあげます。

この一手間を加えることで湿度にプラスして低温度感を盛り込むことができます。

この写真は服装的にも秋、冬とわかってしまうので低温度感を出すためにシャドウに青を入れていますが、5、6月の梅雨時には青ではなく水色を入れると冷めきった印象にはならず少し温かい雰囲気を感じ取れるような写真になります。

フィルム調

最後にフィルム調に仕上げてエモさを出していくレタッチを紹介します。

レタッチの題材となる写真はこちら。

いかにもデジタルで撮った色乗りがよく、コントラストの効いた写真になっています。

ここから懐かしさを感じ取れるようなフィルム調の写真に仕上げていきます。

マットな質感に

フィルムの写真といえばなんといってもサラサラとしたマットな質感。

この質感を出すところからフィルム調のレタッチは始まります。

マットな質感にするためにおまじない的にやるのが、かすみの除去を下げること。

今回は霞ませるのを目的とするわけではなく、どちらかというとトーンを上げるためにかすみの除去を下げます。

ただトーンを上げるだけなら露光量や白レベルを上げれば済みますが、かすみの除去はトーンを上げる光が柔らかくなります。

この柔らかさはフィルム調の写真にする上では欠かせません。

そしてマットな質感を作り上げるにはトーンカーブを使います。

フィルム調にする場合は下図のようなトーンカーブの形にするのが基本形。

湿度感のレタッチでも紹介しましたが、左側のポイントをあげて黒の階調を潰すとともに、今回は右側の白の階調を潰します。

暗い箇所から明るい箇所まで階調豊かに表現するデジタルな写真の階調をあえて潰すことで、フィルム調に仕上げていくといった感じです。

かすみの除去とトーンカーブを調整した写真がこちらになります。

まだ色味の調整はしていませんが、なんとなく光が柔らかくなってマットな質感になっているかと思います。

淡い色味

次にフィルム写真で特徴的な要素といえば淡い色味。

淡い色味は全体的に彩度が低め、かつ輝度高めというのがポイントです。

今回の写真は桜のピンク、空の青、肌のオレンジの三色が大きく割合を占めています。

この三色の彩度を下げつつ輝度を上げていきます。

全体の彩度や自然な彩度で彩度調整してしまうと全ての色が変わってしまうので極力使わないことを勧めます。

青を水色に寄せてあげるとよりフィルムぽい淡い色味となります。

色味を調整したらこんな雰囲気になりました。完成まであと一歩といったところです。

仕上げに

料理に胡椒を振るように最後に写真にあえてノイズを載せて完成です。

Lightroomの粒子の項目を上げると意図的にノイジーな写真にすることができます。

粒子はただノイズが乗るだけではなく、光が柔らかくなるためよりフィルム調な写真に仕上げることができます。

エモいと一口で言うけれど

エモい写真の定義がなければ、人によってエモいの雰囲気は異なります。

今回私が紹介した3つのレタッチパターンもあくまで一例であって他にもエモいと言われる写真は無数にあります。

レタッチの方法を本やWebで仕入れるのはもちろん必要ですが、上達のコツは自分で触っていじっていくことにあります。

今回紹介したレタッチの流れや手法もいったん試してみて引き出しにしまっておくのがいいと思います。

私が紹介した方法が必ず正というわけでなく、これをベースに自分なりのレタッチ方法を確立していくのが上達にも自己満足にも繋がっていきます。

私が運営しているCameRifeではレタッチの基本的な解説から一風変わったレタッチ手法も紹介しています。

レタッチでお困りの方は何かの参考になるかと思います。

レタッチ以外にも写真やカメラについて記事を書いていますので、遊びに来てください。

最後に

今回はレタッチ編ということもあり、撮影編についてはあまり触れずに記事を書きましたが、レタッチだけではエモい写真にはなりません。

エモい雰囲気にはなるかもしれませんが、写真を見る人の心を掴むには撮影から完成図をイメージしておき撮影していくことが必要となります。

撮った写真と共に撮影前、撮影中のイメージを持って帰ってきてイメージが新鮮なままレタッチするとハマることが多いです。

それがエモさにも繋がるのかなとも思います。

レタッチは抽象的で複合的な作業ですが、個性を存分に発揮することができる工程です。

本記事でなにかしらを得ていただければ、それをまた一つの引き出しにしてエモさを演出してみてくださいね。